整理手順

  1. 型紙が箱に入って積まれていた順に、上から下に向かって通し番号をつける。
  2. 型紙のコピーをとる。
  3. コピーを用いて複数型の組を探す。
  4. スキャナーを使って画像を取り込む。このとき透過原稿ユニットを使う。これを使うと、彫際に影が出来ず鮮明になる。私はEPSONのES2000を使った。このスキャナーはA4サイズなので、型紙を4回に分けて分割して取り込み、画像を合成する必要がある。型紙の中にはA3スキャナーを越えてしまうものもあり、文様部分だけでなく型紙全体をデータ化する必要性、機器の価格等を考慮し、ES2000を使用した。しかし、画像合成処理に膨大な時間を費やしてしまうので、金銭的な状況が許すならば、A3スキャナーを使って全体を一回でスキャンし、A3サイズオーバーのものについても、文様部分だけでも一回でスキャンした方が効率的かつ正確である。透過原稿ユニットを使うもう一つの理由は、赤外線もしくはX線撮影に近い効果を比較的簡単に得ることが出来るということである。これは、型紙の接合状態や反古紙の内容、そして商印を確認するために非常に有効である。商印の場合は型紙の表面に押してあるため、場合によっては通常の反射スキャンの方が鮮明な場合もあるが、反古紙の場合ほとんどが文字の面を内側にして貼り合わせてあるので、透過スキャンでなければ判読不能である。使い込んである型紙は黒に近い色になっているものもあり、その内容はおろか商印の場所さえなかなかわからない場合が多かった。それに加え、反古紙を使ってある場合はその内容、特に宗門人別帳の印との見分けがきわめてつけにくい。透過スキャンと反射スキャンを組み合わせながら、可能な限り拾い上げていった。
  5. 型紙を保存用紙に挟み込む。保存用紙には平和紙業のクラーク60(中性紙)を使った。
  6. 画像処理ソフトを使って画像を合成する。この作業に最も時間を費やした。4回に分けてスキャンした画像の文様部分の隙間を縫うように切り抜き、合成、変形を繰り返していく。出来上がった画像は型紙そのものと完全に同じというわけではないが、実寸で目視する分にはほとんど問題ない程度に仕上げることが出来た。
  7. パソコン上で分類をし、データベース化する。ソフトは当時使っていたApple社のClarisworksを使った。しかし拡張性、データの互換性等を考えるとFileMaker社のFileMakerが最適ではないかと思う。
  8. 分類に従って型紙に新しい番号をつける。

複数型の合成

 私は染色の経験は全く無く、知識も書物から得たもの以外ほとんどない。どの型紙をどのように使うのか、捺染、防染、型置きの順序、色の種類、濃度、などほとんどが確定できないことであったので、まずは私の主観のみで作ってみた。専門家の目で見れば完全に間違いである色付けもあるだろうし、指摘を受け現在は自分自身で間違いに気づいているものもある。しかしそのようなものの中にも、結果としておもしろい絵柄になっている場合があるので、そのままにしている。
 型紙は使用前の乾燥した状態であり、長年にわたり繰り返し使用され、状態が良いものであっても多少は変形している。また一組の型紙であっても、彫り抜いてある場所、大きさが違うため、ゆがみの方向および量が一定ではない。この状態で単に重星を重ねても、絵柄全体が正確に合うことはまずない。このため、染め上がりの絵柄を浮かび上がらせるには、かなりの修正が必要であった。

分類およびデータ採取の基準

 型紙の種類

 文様の種類

 あまりに細かく見てしまうと収拾がつかなくなってしまうので、最も印象に残った絵柄を主文様として分類した。データベースの中には、文様として目についたものはすべて記載した。

 サイズの測定

 型紙そのものではなくスキャンした画像を用いた。
 まず左側の上下の送星、もしくは送りの目印にしている絵柄の一部を鉛直にする。一枚物の場合は、絵柄と型紙の上辺下辺を目視によって可能な限り自然に水平にする。そのうえで、画像処理ソフト上で測定していく。型紙サイズは最大の部分で測定する。文様の幅である彫幅も最大の部分を測定する。送幅については左側の上下の送星(目印の絵柄)で測定する。
 測定基準として左側を用いたことには特別な理由はなく、便宜的なものである。

星について

星についての解説
 左図は型紙の略図である。白枠は絵柄が彫ってある範囲である。
  赤・・・送星
  青・・・重星
  黒・・・その他(縞など糸入のしてある物に多い。)
 まず送星だが、全体の67%(801枚)に存在する。残り33%は完全な一枚型もしくは上下の絵柄の一部を送りの目印にしている。
 次に重星は、全体の53%(638枚)に存在する。重星があるもののうち39%(246枚)は相方が見当たらない。相方が存在するものの中にも絵柄として不完全な物があり、いつの時代にか1、2箱紛失してしまったのかもしれない。
 そしてその他だが、これは糸入の時に紙を張り合わせるときの目印にしたものだと思われる。多いパターンとしては、上左右と下中央の3点タイプ、絵柄の四隅の4点タイプがある。
 また、これは絵柄上部の一部を使って送りの目印にした微細な絵柄の小紋、小紋中形に多かったのだが、その目印の直上に星(大きさは通常の送星、重星の半分ほど)を打ってある物があった。あまりにも柄が細かく目標が定めにくいため、このようにしたのではないかと思われる。