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複数型(追掛け型)

 一つの文様を染め上げるための型紙を彫る場合、色彩的な要請および物理的(強度的)な要請から、複数の型紙に彫り分けることがある。このような型紙のことを、染色の世界では「追掛け型」と呼んでいるようである(先に型置きした後を追っかけるようにして次の型紙を置いていくからであろうか)。我が家のものには、二枚、三枚、四枚、五枚(伏型を含む)のタイプがある。文様の構成要素は輪郭と彩色に大きく分けられ、輪郭の構造、色数、地の染まり方(地染まり、地白)によって必要な枚数が決まってくる。

文様の構成方法

 複数の型紙を使った輪郭の構成方法は大きく分けて二種類ある。まず地染まりでは、輪郭をつなぎ合わせる方法をとっている。地染まりの型紙では、染まらずに白く残る部分を彫り抜くのだが、一枚の型紙では強度的に問題があったり物理的に不可能であったりした場合、二枚の型紙に彫り分けることによって、その文様を可能にしている。次に地白であるが、彫り抜く部分が広大であり、染まる部分(型紙の部分)がいわば宙に浮いている場合がほとんどである。このような文様を二枚の型紙で彫り分ける場合、まず一枚目の型紙で岸辺から橋(ブリッジ)をかける要領で文様部分が落ちないように吊り、次に二枚目の型紙で、最終的には必要のないその橋(ブリッジ)の部分に防染糊が置かれるように彫る。つまり、一枚目で防染糊を置き尽くせなかった部分(橋の部分)に二枚目で置く、ということである。彫り方としては、一枚目で可能な限り彫れるところまで彫り(主型)、二枚目で残りを彫る(消型)。消型と呼ばれるのは、このように「吊りを消す」という意味合いからであろう。

 また、型紙の彫り分け方による文様の構成方法にはいくつかのパターンがあると思われる。我が家の型紙に存在するパターンを以下に分類してみる。なお便宜上、輪郭構成用の型紙を輪郭型、彩色用の型紙を彩色型、輪郭と彩色の両方の役割を比較的均等に担っている型紙を混合型と呼ぶことにする。ここにおける彩色とは、捺染によるものに限らず防染も含め、比較的広い面積にその周囲と異なった色環境を作ることとする。また、鳴海紺型(うるみ型)、和更紗型は輪郭型、彩色型、混合型とは別に扱う。

 Sampleボタンをクリックすると各タイプの解説ページへ行く。画像は部分的に抜粋してあり、黒は型紙、赤は型付け後の糊である。それぞれ透明画像になっており、各画像はマウスカーソルで移動できるので、様々に重ね合わせることができる(Firefox 78.15.0 , Safari 11.1.2 , Google Chrome 103.0.5060.134確認)。「No.」の文字を重ねると全体が正確に重なるようになっている。型紙の文様原案から染色までの工程の一部分を理解する一助となればと思う。

二枚型
輪郭型二枚 地染まり
輪郭型二枚 地白
輪郭型一枚、彩色型一枚
混合型二枚
鳴海紺型二枚
和更紗型二枚
三枚型
輪郭型一枚、彩色型二枚
鳴海紺型三枚
和更紗型三枚
四枚型
輪郭型二枚、彩色型二枚
鳴海紺型四枚
和更紗型四枚