商印について

 商印は大きく分けると、型紙を販売する型商の名称と、型紙の種類を表すものの2種類あるようである。
 まず型商の名称の印だが、以下に掲載した3つのものが最も多く、全型紙1200枚中「山中権七」が12.9%(155枚)、「鍵屋吉朗治」が9.4%(113枚)、「ひしや伊兵衛」が7.9%(95枚)である。ほとんどの場合、表下に主となる大きな印、裏上又は下に副となる小さな印となっている。主のみ、副のみの場合もある。この3店の印にはどれも、「伊勢」、「紀州」、「勢州」、「白子」、「寺家」など伊勢型紙の産地名が記載されている。中田四郎氏の「伊勢型紙の歴史」に記載されている型売り株仲間の行商圏を引用させていただくと、「山中権七」は筑前、筑後、肥前を行商圏としている。また名称が完全に一致しているわけではないが、「吉朗治」は筑前、筑後、肥前、肥後を、「片山伊兵衛」は筑後、肥後をまわっている。また「長孫」という印も3.9%(47枚)存在するのだが、「長谷川孫七」という者が筑後、肥前、肥後をまわっている。西国・九州行きの株仲間の台帳の中には「筑後柳川」の記載もあり、我が家もこれらの型商から型紙を購入していたと思われる。また京都、九州の型商の印らしきものも数枚あり、京都堀川、肥前、肥後、筑後の紺型屋とある。また「内田」という印が一枚あるが、四国行きの中にこの名称がある。また「竈賑社」(明治13年に設立された型紙製造販売の会社)の印も1.3%(16枚)あり、これは朱印である。このうちの一枚には個別の型商の印(「ひしや伊兵衛」)と共に押してある。
 次に型紙の種類と思われる印は、「大」、「中」、「小」、「上」、「上々」、「極」、「松」、「竹」、「梅」、「万」、「極万」、「上万」、「毛万」、「上小紋」、「小紋」、「小紋改」、「改」、「上代」、「元中」、「元中物」、「間中」、「直違」など様々である。中には型商の名称なのか型紙の種類なのか判断がつかない印もあったが、それらは一応種類の方に分類した。特に、「上代」、「元中」、「間中」、「直違」については型商の名称ではないと思うのだが、意味する所は全くわからない。

型商の名称

  山中権七 鍵屋吉朗治 ひしや伊兵衛
商印 山中権七 メイン 商印 鍵屋吉朗治 メイン 商印 ひしや伊兵衛 メイン 
商印 山中権七 サブ 商印 鍵屋吉朗治 サブ 商印 ひしや伊兵衛 サブ